コラム
アンデルセンってどんなひと?

アンデルセンという人は、物語やお芝居、そして旅行が大好きで、子どもたちに支えられ、子どもたちを愛した童話作家でした。

彼はデンマークの貧しい靴屋の家に生まれました。しかし彼の父は当時の職人階級としては珍しく、かなりの読書好きの教養人。幼いアンデルセンは「アラビアンナイト」などを読み聞かせてもらって育ちます。彼が11歳のころに父親は亡くなってしまいますが、アンデルセンは物語やお芝居が大好きになります。

アンデルセンが大好きだったもうひとつのもの、それが旅行です。鉄道はまだまだ未発達、移動といえば馬という時代に「旅は私の学校」といって生涯に29回も国外旅行をしています。旅行記も出版し、さらにイタリア旅行での体験を元に創作した小説「即興詩人」で評価され、アンデルセンは作家としての地位を不動のものとしました。童話の中にも主人公が旅をしたり、遠い異国の地が舞台だったり、と、彼の旅行好きな一面が現れています。

さて、小説で成功した彼はなぜ「童話」を書き始めたのでしょう。たくさんの物語を聞かせてもらった幼少の頃のことを思い出したからかもしれません。今度は自分がこども達に語り聞かせたいと思ったのかもしれません。彼の初めての童話集に収められた「火打ち石」という作品は、「アラビアンナイト」を下敷きにしたものでした。

しかし実を言うと、彼の最初の童話集は余り評判がよくありませんでした。当時、童話が文学のジャンルとして認められていなかったためです。「『即興詩人』のような立派な小説を書ける人が、なぜ子どもだましな作品を書くのか」と批判されました。しかし、田舎を旅行した際にたくさんの子どもたちが自分の作品を読んでいることを知ります。子どもたちの声に励まされ、アンデルセンは童話を書き続けることにしたのです。

(制作:太田歩)